高次脳機能障害

By | 2015年7月27日

高次脳機能障害とは?

 

脳は、非常に繊細かつ多機能な器官ですよね。

脳と心臓は、他のなにものにも代えがたい人体にとって最も重要な内臓器官です。

 

交通事故には、頭を打ったなど直接負ったけが、または一見すると健康そのものに見えるのだけれど、なんだか事故以前と人が変わってしまったように見えるという非常に厄介な後遺障害があります。

 

見た目では完璧に判断することが難しく専門的なテストや診断を受けてみないとなんともいえない部分もあるものの、脳が傷ついたことによって今までできていたことができなくなる。物覚えが悪くなる。簡単にいうと認知症のようになってしまうのが、高次脳機能障害という後遺障害です。

 

脳内出血やくも膜下出血、頭部を激しく打ったことによる脳挫傷、頭蓋骨の骨折などが起きると、低くない確率で脳に甚大なダメージが残ってしまいます。

脳はそのパフォーマンスを発揮するため、常に大量の血液中の栄養と酸素を必要としています。けがによって脳がはれてしまい、血流が圧迫されて一部分が壊死したり、物理的に脳のいち部分が削れてしまったりすると、なんらかの形で障害が残ってしまうわけです。

 

今回は、高次脳機能障害というものに焦点を当てて、もしあなた自身やあなたの身の回りの人が、交通事故のあとこういった症状、状態を見せるのであれば「高次脳機能障害なんじゃないか?」と感がられるように、代表的な症状の説明をしていきます。

 

高次脳機能障害の代表的な障害

 

それでは早速、「思い当たる節があればぜひ精密検査を受けてほしい」高次脳機能障害の代表的な障害の分類を紹介してみましょう。主な障害として定義されているのは、

 

・新しいことが覚えられないなど、記憶に関する障害

・集中力や注意力、いくつかのことを同時に行うことに関する注意障害

・計画立てて物事を進めていく能力に関する遂行機能障害

・怒りが抑えられなかったり、場の空気を読めなくなったりする社会的行動障害

 

の以上4種類です。まずは、この4種類の代表的な障害のことをより詳しく補足していきましょう。

 

記憶障害

 

記憶には、過去覚えたことを思い返す能力と、それを目の前のものと照合する能力とがあります。小難しいことは抜きにして考えてみると、事故のあと記憶が欠落していてどうしても思い出せないことがある。今まで普通にできていた新しいことを覚えるということができない。

 

こういった状態になってしまうということです。

記憶ができないというのは、例えば物理的に記憶しておくことができなかったり、脳の中に記憶としてデータは蓄積されるものの、それがどこに行ったのかわからなくなって思い出せなくなったり、記憶を引き出すことはできるものの、目の前のものとの照合ができない、認知ができないなどで記憶ができなくなったり、色々あります。

 

ど忘れくらいならば誰にでもありますが、「どんなに苦労しても思い出せない」「覚えることができない」場合、記憶障害になってしまっている可能性は否定できません。

 

注意障害

 

注意散漫、なんてことばがありますよね。例えば、一般的な人ならば、パソコンの前に座って仕事をしているときは、仕事のことを考えて集中しているはずです。

 

しかし、注意障害になっている場合、どうしても長時間同じことに集中し続けたり、興味を持って取り組んだりするのが苦手になってしまいます。

 

なんだそんなことか、と思うかもしれませんが、本当に大変な障害なのです。台所で火を使ってお湯を沸かしているとき、当然火がついているので火事に注意しますし、お湯が沸いたらすぐに火を止めますよね。

 

しかし、注意障害だと火にかけている鍋のことを放って別のことをしたり、お湯が沸いてもそちらに注意がいかなかったりします。ついうっかりや不注意によるけがなども当然増えますし、いわゆるマルチタスクと呼ばれるような行動を取ることもできません。

 

携帯電話でメールの返信文を作りながら、リモコンでテレビやエアコンの操作をする、ということにもどうして良いかわからずフリーズしてしまったりします。

 

遂行機能障害

 

例えば友人と会うときは、何日にどこに集まるか計画を立てますよね。

遂行機能障害になっている場合、こういった少し先のこと、未来の計画に沿って行動することができなくなってしまうのです。

 

抽象的な指示、表現が理解できなくなる、といったほうがわかりやすいでしょうか。夜寝るときは部屋の電気を消す、という行動。これを行わせるために、「寝るときは電気をつけっぱなしにしないでね」といっても理解ができないのです。

 

何時になったら照明のスイッチがあるところまで行って、スイッチを指で押してオフにして、明かりを消す。このくらい指示を細分化したり、具体的にしないと意味を捉えることができないわけです。

 

社会的行動障害

 

人間は社会的な生き物だといわれています。

人っ子一人いない無人島で生活していく人は大多数ではなく、ほとんどの人は社会に属して社会のルールのなかで生活をしているからです。

 

ただ、人と人との関わりのなかで、遠慮をしたり本音と建前を使い分けたり、頭に来てもぐっとこらえたりすることはままありますよね。

 

しかし、社会的行動障害になっている場合、このストッパーが働きません。激しく感情的になってしまったり、暴力に訴えたり、決して自分のミスを認めなかったり、一言でいうととても社交的でない人物になってしまいます。

 

適切な後遺障害の等級を得るために

 

高次脳機能障害にももちろん程度というものがあります。

今回紹介した4種類の障害は、あくまで代表的なもので、他にも失語といってしゃべることができなくなってしまったり、とにかくまるで人が変わってしまったかのようになってしまうケースもあります。

 

ある部分ではまったくもって正常だが、別の部分では重度の障害があるという場合もありえます。通常の後遺障害などと違ってひと目で判断することも不可能ですし、それぞれの能力に関して個別にテストを行い、どのくらい機能が落ちているのか、障害があるのかを確認しなければ、後遺障害認知の等級すら決まらないのです。

 

自賠責保険では、労災での基準も加味して考えますし、当然自賠責基準と裁判基準では同じ後遺障害の等級になったとしても金額は大きく異なります。

 

身体的な部分での後遺障害が残っていない場合、本人が治療やリハビリを拒否することもあり、いかに準備をしっかりして損害賠償請求のために情報を揃えていくかが重要です。

 

高次脳機能障害の場合、本人の治療やリハビリも大切ですが、それ以上に周囲の人の理解や対応の工夫が大事になってきます。一朝一夕にできることではないので、検査や診断、治療、リハビリに関しては専門機関を頼り、交渉に関しては弁護士を頼ってほしい問題です。

 

目に見えない後遺障害だけに示談では決着がつかず、裁判をしたほうが良い結果になることもあるのです。