遷延性意識障害

By | 2015年7月27日

交通事故によって残る大きな後遺障害

 

「遷延性意識障害」せんえんせい意識障害と呼ばれるこの状態のことを、あなたはご存知でいらっしゃいますでしょうか?

 

交通事故によってあなたやあなたの身近な人が負うことになるけがには、ごくごく軽いものからこのうえなく重いものまで様々あります。

死亡事故がなによりも悲惨なことに間違いはありませんが、現実的に考えるとある一面では被害者が死亡してしまうケースよりも大変なのが、重度の後遺障害が残ってしまうパターンです。

 

遷延性意識障害は、いわゆる植物状態と呼ばれる状態のことを指す、重度の後遺障害のひとつです。昏睡状態の重いものと思ってもらって構いません。

 

今回は、この遷延性意識障害というものがどういった後遺障害なのか、交通事故のあとどのようなハードルを越えていかなければならないのかを説明していきます。

 

遷延性意識障害とは

 

人体のメカニズムとして、脳は電気信号を神経によって伝達し、体の各器官を随意不随意によらず動かしています。

例えばこのページをスクロールする手や指先の動きも、まずは脳が指示を出し、脳からの指示が頚椎と脊椎を通っている神経の塊である脊髄を取って手のところまで届くことで、はじめて筋肉が動いているわけです。

 

人間の体のあらゆる動きが、脳によって管理されているなかで、もし脳に損傷を受けてしまうとどうなるでしょうか。

脳というのは、大きく分ければ右脳と左脳なんて呼び方もしますが、とにかく全ての部位に対して役割分担がされている器官です。

 

基本的に、神経や脳の器官は傷ついてしまうと完全に復元されることはありません。ちょっと手のひらを切ったくらいのけがなら目に見えないくらい完璧に治ってしまうものですが、それぞれが重要な役割を持つ脳の場合はそうもいかないのです。

 

例外的に、脳や神経の損傷に対してバイパス的に他の部分が補助をすることで、元の状態に近しい能力を取り戻すケースもありますが、それはまだ解明されていない奇跡のようなものであり、誰にでも期待できるものではないのです。

 

交通事故によって頭をけがした場合、例えば頭を強く打って脳がシェイクされてしまい、脳内で出血してしまった。脳挫傷を起こしてしまったなど、損傷をした場合、傷ついた部分が担当していた能力を失ってしまうことになります。

 

診断の基準としては、

 

・自分の意思で体を動かせない

・ものを噛み飲み込むことができない

・トイレを我慢することができず、他人に処理してもらわなければならない

・目で見たものを追うことはできても、認識ができない

・ことばが話せない

・単純な反応や反射、ごく簡易的な命令に対する反応を除いて、コミュニケーションが取れない

 

といった項目を満たすのが遷延性意識障害です。

脳のなかにある、体を動かせと指示を出す部分、トイレを我慢したり、そろそろトイレに行きたいという行動を起こす部分、目の前にあるペンをペンだと理解できる部分、発話を司る部分、話しかけられたことばやジェスチャーを正確に理解して反応を返すための思考能力。

 

これらが物理的に損傷しているので、生命維持に必要な呼吸や心臓の鼓動などは自力でできても、他のことができない。他人に介護をしてもらう必要がある。

こういった、非常に大変な状態になってしまう後遺障害です。

 

交通事故では、衝撃が大きいこと、シートベルトでは頭部が完全には保護されていないこともあって、打ちどころが悪ければ誰しもに起こりうる後遺障害でもあります。

 

遷延性意識障害と病院での治療の問題

 

遷延性意識障害の難しいところは、治療を受けるのが難しい、というところにあります。

当然入院をしてけがの治療にあたるわけですが、脳の損傷である以上、体の治療が一段落してしまったら通常の処置ではできることがありません。

 

病院もビジネスです。90日以上の長期間滞在する患者は制度の問題上、国からもらえる補助金が減ってしまうので、ベッドの回転率を高めたいと思っています。そのため、事故後3ヶ月ほどで退院を促されたり、転院をしてくれ、といわれてしまうことが多いです。

 

介護と医療は必ずしも同一のものではありませんし、回復の見込みがない患者、専門的なリハビリが必要な患者をずっと置いておくよりも、毎日のように運び込まれる治る見込みのある患者を助けたい、という側面もあるので、こればかりはどうしようもありません。

 

そのため、事故からたった3ヶ月の間に在宅での介護をしていく覚悟や準備をしなくてはならないのです。

 

在宅介護と遷延性意識障害の難しさ

 

遷延性意識障害になってしまった場合には、介護が必要です。自力で排泄の処理ができない。食べ物を食べることができない。体を動かすことができないので、最低でもそれらの介護を行うことになります。

 

ただ、在宅介護は大変です。寝たきりの状態になってしまうと、たったの数時間で床ずれを起こしてしまいます。数時間後とに姿勢を入れ替える大変さはいうまでもありません。排泄のケアや栄養バランスを考えた食事なども最初は戸惑うことでしょう。

 

法律の関係で、医療行為とみなされる処置(爪切りやたんの吸入)に関しては医師免許や看護師資格を持つ人以外では家族しかできないので、有料の介護サービスを使うのも困難です。

 

体調が急変しても自力でそれを知らせる手段を持たないので、24時間常に誰かが様子を見ておかなくてはなりません。並大抵の覚悟では取り組むことのできないつらさが、遷延性意識障害のあとには待っているのです。

 

とはいえ、遷延性意識障害の方を受け入れている施設もあるので、そういった専門的な施設に入ることを検討するのも一つのやり方です。

 

遷延性意識障害になった場合、適切な賠償請求ができるのか?

 

遷延性意識障害になった場合、後遺障害認定等級はまず間違いなく高い等級になります。

しかし、裁判基準における後遺障害等級の第1級でも、請求できるのは3000万円以下の金額です。

 

もちろん治療費や精神的な慰謝料、介護にかかる費用、逸失利益なども加算されるのですが、本当に介護がしやすくなるくらいの適切な賠償請求をするためには、いくつものハードルを越える必要があります。

 

急な事故と身内の介護で心身ともに疲れきっているあなた方に対して、大抵の場合交渉することになる保険会社は同情してはくれません。示談交渉や裁判の場でも、平気であなた方の心を傷つけて妥協させるためのことばを使ってくることもあります。

 

ただ、交渉の途中で折れてしまうと、二度と適切な損害賠償請求をする機会は失われてしまうのです。

エジソンに任せていただければ、身の回りのことをする時間を確保できますし、介護の実態などからより適切な金額での交渉に持っていくことも可能です。

 

交通事故によって重度の後遺症が残った場合、本人のケアと介護とは別に、家族の負担を軽減するかことも忘れないようにしましょう。