車両使用不能時期の費目

By | 2015年7月27日

車が使えないことで発生する損害

 

交通事故によって車が傷ついてしまった、ディーラーに持っていって工場で修理してもらわなければならなくなった。

 

こういった場合、あなたが負う損害というのは決して自分自身のけがや治療にかかる金銭的負担、事故そのものに対する精神的な苦痛、はたまた車の修理費用だけではありません。

 

けがの治療にこれだけのお金がかかったから治療費を請求する。一生涯に渡って付き合っていかなければならない後遺障害が残ったから、その分の精神的苦痛に対する慰謝料を請求する。事故にあわなければ普通に働いて収入を得ていたはずなのだから、その分の損失を補填してくれと請求する。

 

これらの請求内容と同じように存在するのが、「車が使えなくなったことで発生する損害」に対する請求です。

 

交通事故で車が壊れている場合、自分の車は修理が終わるまでは使うことができませんよね。

 

全損していても、とにかくまた新しい車両を手に入れるまで車は使えないわけです。車が使えないということは、例えば代車を用意しなければならなかったり、諸々の雑費を手出ししなければならなくなったりするということです。

 

今回は、車が使えない期間中にはどんな損害が発生してしまうのか、またその費目はどういう名前で、どの程度請求できるものなんか、を紹介していきます。

 

車両の修理以外にかかるお金を請求できる

 

車両使用不能時期の費目としては、「車がないことが原因」であり、なおかつ「どうしても必要な費用」だった場合に認められます。

 

車両の修理以外に請求することの多い費目は、代車を利用するための費用に休車による損害、各種の手数料に雑費、という内訳です。

 

それぞれの費目を確認していきます。

 

・代車を利用するための費用

 

事故に遭ったせいで車に乗ることができない。だから車の修理が終わるまでの期間、もしくは新車の納車が行われるまでは相手側がお金を出して代車を用意すべきだ。

 

一見するとごもっともな意見ですし、感情的にはそれもそうだと思うのですが、損害賠償請求においては感情論はあまり重視されない傾向にあります。

 

法律はただのシステムであり、どんなものであれそこに感情が入ってきてしまうと、客観的な判断や評価ができなくなってしまうからです。

損害賠償請求は、弁護士に頼んでも最終的には裁判に行き着きます。裁判では感情が反映されない法律に従って裁定がくだされるので、保険会社との示談の段階から法的に請求しても支払い命令がされそうにない項目は、弾かれてしまいやすいのです。

 

確かに、車がないと困ります。

ただ、車というのは移動手段であり、バスや電車、徒歩、自転車などで移動してはいけないという理由でもない限り、代替手段があるのなら代車の費用を請求することはできない可能性が高いです。

 

事前に確認せずに代車を用意してしまった場合、その費用は結局請求できず、車の修理費に代車代と大損をしてしまった、なんてケースもありえます。

 

「周辺には公共交通機関もなく、車がないと移動もままならない地域に住んでいる」「お客さまを乗せて送り迎えをすることもあり、どうしても仕事に車が必要だ」など、代車を利用するにあたっての妥当な理由が求められるのです。

 

また、代車のグレードも問題になりやすい部分です。

どうしても代車が必要としても、高級車を選ぶだけの必要性はほとんどの人にありませんよね。例えあなたが普段高級車に乗っていたとしても、代車としての性能はとにかく走れば良いわけですから、使った費用のいち部分しか認められないこともあります。

 

2ヶ月間代車を利用したが、実際には1ヶ月分しか請求できなかった、なんてこともあるので、代車の費用に関しては必要だという理由と証拠を揃えたうえで、必要最低限利用するようにしたほうが良いです。

 

・休車損

 

車がないと仕事にならない。会社の車である。こういった場合、ちょっと話は変わってきます。

例えば個人タクシーの運転手が事故で車を失った場合、営業活動上必要なツールを失ったことになりますよね。

 

交通事故さえなければ、あなたはその間お客さんを乗せて収入を得ていたわけです。個人タクシーとして活動するうえで、適当な代車で代わりが務まるとは思えません。過去の営業の記録から、車が使えなかった期間どのくらい利益が出るはずだったのか、を割り出すことができれば、この期間中の休車損害に対する賠償を行うことができます。

 

ただし、前月の売り上げや前年度の同じ時期の売り上げなど、膨大なデータから適切と思われる数値を求めなければならないので、手間はかかってしまいます。

 

・積んでいた荷物への損害賠償

 

輸送業などを行っている場合、また仕事上必要なものを車に積み込んでいて、それが壊れてしまった場合や、大切な家族であるペットが死んでしまった場合、特例的にその荷物に対する求償ができる場合もあります。

 

運送業などで、相手の不注意による事故が起きれば、荷物を用意しなおす必要もありますし、また運送の遅れを謝罪する、次の手を打つなど様々な損害が出ることになります。

 

ペットなら愛情や思い入れが深いということも十分に考えられるので、その分の精神的苦痛に対する慰謝料、実害を補填するための損害賠償という形で請求します。

 

もちろん、この費目に対してもいくら請求するのかが適切なのかは事例によって異なりますし、自分たちで妥当な金額を求めなくてはなりません。

 

・各種手数料

 

全損したとしても、車を廃車するには手数料がかかりますよね。

新車を購入するときも、ナンバー登録が必要ですし、とにかくこまごまとしたお金がかかってしまいます。これらの費用は当然事故さえなければ支出する必要のないものだったので、請求することができます。

 

ただし、保険を使ったことによって等級が下がり、増えてしまった毎月の保険料や、新たに保険へ加入するためのお金は請求できません。保険は損害ではなく、なにかあったときのために本人が自分のリスク回避として用意するものだからです。

 

・その他雑費

 

その他細々とした出費があれば、場合によっては損害賠償請求の対象とみなされることもあります。例えば、新車に買い換えるにあたってかかる自動車の取得税などです。

 

物損関係の損害賠償は難しい

 

けがの治療や後遺障害など、人身の部分は比較的交渉のしやすい損害賠償費目といえます。

しかし、車両関係の損害賠償請求は、そもそも自賠責に賠償基準が設けられていないこともあって、非常に交渉が難しいのが現実です。

 

感情的な部分では決して納得ができない、というまま決着を迎えてしまうことも考えられます。最初から損害賠償に含めるつもりで使っていた代車サービスなどが認められず、困ったというケースもあります。

 

物損関係の損害賠償を行う際は、できれば事前に弁護士と相談したうえでどの費用をどのくらい請求するのが妥当なのか把握して交渉に進みましょう。