自賠責基準と裁判基準に関する後遺障害慰謝料の比較

By | 2015年7月27日

後遺障害慰謝料の請求をするための基準とは

 

交通事故のけがが原因で、腕が動かなくなった。目が見えなくなってしまった。麻痺が残って運動機能が落ちてしまった。耳が聞こえづらくなってしまった・・・。

 

ごくごく軽いけがで済めば良いのですが、交通事故も場合によってはこのように大きなけが、そして決して軽くない後遺障害が残ってしまう場合があります。

 

損害賠償請求は、交通事故によってあなたが受けた被害、損害に対する補償として相手に請求することができる金銭的な要求です。

お互いの主張だけでことを決めてしまうとなかなか交渉はうまくいきませんし、交通事故ごとに全く別の基準で損害賠償額を決定するのは公平とはいえませんよね。

 

そこで、損害賠償請求では一定の基準を設け、その基準に従って損害賠償請求の金額を計算することで、一律公平な請求ができるようにされています。

 

治療費や慰謝料など幾多の項目がある損害賠償請求ですが、そのなかでも今回は、「後遺障害慰謝料」に注目して説明を行っていきます。

 

交通事故によって不運にも受けてしまった障害は、あなたが今後一生付き合っていかなければならない負の財産です。当然、相手には受けた障害の度合いに応じて金銭的な要求をすることで、介護用の車を購入したり生活費の足しにしていかなくてはなりません。

 

ここで気をつけたいのが、後遺障害慰謝料の基準は大きく分けて3つあり、なかでも自賠責基準と裁判基準の2つが重要だということです。

 

公平な請求を行うために、法律では自賠責基準というものが設けられています。自賠責基準を慰謝料の最低額とすることで、不当に低い金額で示談せずに済むようにあなたの権利が保護されているわけです。

 

しかし、実際の物価や生活を考えると、自賠責基準で示談をしてしまっては十分な金額での賠償を受けているとはいいがたいのが現実です。そこで、真実公平妥当だと判断される基準として、裁判を行った場合に採用されることの多い基準、裁判基準が重要となってくるのです。

 

・自賠責基準

 

自賠責基準では、後遺障害を全16種類に分けて考えます。第1級から第14級までの14種類と、神経の損傷などを伴い、常時介護が必要な場合の介護1級と、同じく神経の損傷などを伴うものの、随時での介護が必要な場合の介護1級の全16種類です。

 

自賠責基準では、最も支払額の高い、常時介護が必要な介護1級でも最大1600万円までの支払いしか認められません。通常の後遺障害等級である第1級では、1100万円が最高額となっています。

 

1級ともなると、事実上働いて収入を得る、ということがほとんど不可能なくらいの障害が残っている状態です。あなたが今後数十年生きていくための資金として、1000万円というのは余りにも心もとない金額ですよね。

 

・裁判基準

 

裁判基準は、厳密にいえば2種類があります。いわゆる赤本基準と呼ばれるものと、青本基準と呼ばれるものです。

 

赤本とは、大学の入試対策のために使われる参考書ではなく、東京地方裁判所で過去行われた交通事故裁判の判決結果から、妥当と思われる平均の金額を取ったデータをまとめた本です。

 

一方の青本では、東京地方裁判所にかぎらず、日本全国の裁判所で行われた判例を元に、妥当と思われる賠償金の額を集計しています。赤本と青本の基準を比べた場合、赤本のほうが若干金額は高くなっています。

 

日本の裁判は判例主義なので、過去どの程度の金額が認められたのか、というのは非常に重要です。過去の判例に則った請求であり、妥当な主張で証拠があれば、自賠責基準を大きく上回っている金額でも請求が認められるのです。

 

裁判基準では、自賠責基準のように介護1級をさらに常時介護が必要かどうかで分けることはせず、あくまで損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所が決めた第1級から第14級の後遺障害の等級ごとに金額を決めています。

 

それでは、実際にいくつかのパターンで自賠責基準と裁判基準の後遺障害慰謝料を比較してみましょう。

 

両者を比較してみよう!

 

・最も高額な後遺障害慰謝料を比較

 

自賠責基準で最も高額な後遺障害慰謝料が認められるのは、介護1級であり、常時介護が必要な状態であるときで1600万円となります。

 

裁判基準ではどうなるでしょうか? 赤本基準に従うと、最高額の慰謝料請求ができるのは後遺障害の等級が第1級だった場合です。第1級の慰謝料額は、平均して2800万円。

 

自賠責基準のおよそ2倍から3倍程度が基準となっています。

 

 

・最も低額な後遺障害慰謝料を比較

 

今後は逆に、最も慰謝料額が低額な場合を考えてみましょう。

この場合、自賠責基準でも裁判基準でも、後遺障害の等級が第14級のときが最低額となります。

 

自賠責基準で後遺障害が第14級のときの慰謝料は、32万円です。一方の裁判基準では、1110万円となります。ここでは金額に3倍以上の開きがありますね。

 

どちらの基準を採用するかで結果は最大3倍の差

 

どうして2つの基準では後遺障害慰謝料の金額がこれほど離れてしまうのでしょうか。

これは、なにも裁判基準が異常に高額になっている、というわけではありません。

 

自賠責基準として決められている金額は、あくまで法律が決められた当時の最低基準です。

時代が違えば物価も違い、介護に必要な道具や平均的な生活費だって違います。裁判基準では、もちろん過去の判例をもとにしてはいますが、あくまで現在の生活を考えて基準額を決めているのでよりしっかりとした金額を請求できるのです。

 

交通事故に遭い、障害消えない後遺症を持った人に対して、「最低限の補償で最低限の生活をしなさい」というのは余り人道的とはいえません。

 

ただ、裁判基準について知らない、交渉する余裕や勇気がない場合自賠責基準に近い金額で妥協してしまう人が多いのも事実です。

 

受けた被害がなくなることはありません。あなたの体の状態に合わせて適正な金額の補償を受けるためにも、弁護士と相談して裁判基準の根拠を得ておくことが重要なのです。

 

裁判基準では、相手に過失があれば別途請求できる

 

なお、裁判基準では介護1級などによる金額の増加がない代わりに、その他の事情が考慮されることもあります。

 

例えば、ひき逃げや当て逃げをされた場合、無免許運転だった場合、速度違反でなおかつ赤信号無視の場合など、事故相手に重大な過失があると認められる場合です。

 

かなり悪質な過失が相手側にあると立証できるなら、あなたが巻き込まれた交通事故は「運が悪い」ものや「避けることができなかった」ものではなく、「相手のせいでより大きな事故になった」わけですから、その分慰謝料を増して計算できるのです。

 

また、全14級ある後遺障害の等級として認められなくとも、明確な後遺症がある場合少額の請求が認められることもあります。

 

自賠責基準で請求するより、裁判基準で請求をしたほうが得なのは確実です。