脊髄損傷

By | 2015年7月27日

交通事故によって起きる脊髄損傷

 

交通事故では人対車、バイク対車、車対車、どのケースであっても、等しく被害を受けた人体には大きな負荷がかかってしまいます。

 

一見するとシートベルトとエアバッグがある車対車の事故が最もけがが少なくて済みそうですが、シートベルトとエアバッグが機能しても、ダメージを避けることが難しいのが、頭と首のけがなのです。

 

分厚い頭蓋骨で保護されている頭はまだしも、首には頚椎という脊椎につながる重要な骨が通っており、人間の体にとって大切な太い血管や脊髄なども通っているので、首をけがしてしまった場合の被害は軽視できるものではありません。

 

特に注意したいのが脊髄の損傷です。脊髄は、脳から指令を体に届けるための司令部のようなものであり、また手足や体の各部からの情報を脳へと届けるための重要な器官でもあります。

 

交通事故では脊髄を損傷してしまい、体の麻痺や昏睡状態に陥ってしまうケースが少なからず起こっています。もしけがをしたらどうすれば良いのか、どのような症状があるのか、を知っておく必要性が高まっているのです。

 

今回は、脊髄損傷についての種別や症状、気をつけたいポイントなどを説明します。

 

・骨傷性脊髄損傷とは

 

体の指揮命令系統は、基本的にトップダウン型になっています。

脳を会社の社長だとすると、そのすぐ下には各部門の上司といった存在、つまり脊髄があって、さらに上司や社長に命じられて動く一般の社員たちがいるわけです。

 

脊髄は、単独で動くことはありません。トップである社長から伝えられた指示を適切に各部署の職員に割り振って仕事をさせます。

時折一般の職員から陳情が上がってくることもありますが、いち社員の意見で会社全体の方針が変わることがないように、手足から信号を送っても脳や脊髄を自由に動かすことはできません。

 

そして、脊髄である上司集団のなかでも、どの部門の上司なのかによってやっていることが違うわけです。経理部門、営業部門では仕事が違います。脊髄が傷つくということは、永遠に経理部長や営業部長がいなくなってしまうようなものなのです。

 

社長の意見を聞いて細かな指示を出す存在がいなくなるので、社長と一般社員が元気でも仕事は回らなくなります。脊髄のどの部分が傷ついたのかによって、後遺症の重さが変わってくるのです。

 

脊髄がぶちっとちぎれてしまった、背骨や頚椎が骨折してしまった、脱臼してずれてしまったなど、直接的に脊髄に損傷がある場合のことを、骨傷性脊髄損傷と呼びます。

 

脊髄は、神経の集合体のようなものです。脳や脊髄など、中枢神経と呼ばれる重要な箇所は、基本的にけがをしても回復することがありません。一旦切れてしまった脊髄は、完全に元の機能を取り戻すことはないのです。

 

明らかに損傷しているので被害も大きく、また精密検査によってどこが傷ついているのかがわかりやすいという特徴もあります。

 

・非骨傷性脊髄損傷(中心性脊髄損傷)とは

 

背骨や頚椎は折れたり脱臼したりしていない。つまり骨傷性の損傷はない。しかし、事故の衝撃で思いっきりのけぞったときに脊髄が伸びてしまっていて、傷ついている。こういった、骨傷性以外の損傷のことを、非骨傷性脊髄損傷と呼びます。

 

これも、脊髄のうちどの部分が傷ついているかによって被害は変わってくるのですが、主に脊髄の中心部には上半身を動かす神経が集まっています。中心部分が傷つくことによって、腕の麻痺などが出やすいのが特徴です。

 

逆に、脊髄の外側には下半身を動かす神経が集まっているので、どこをけがしたかによって麻痺の場所もある程度特定することが可能です。

 

骨傷性脊髄損傷とは違って脊髄が伸びていたり、中心部分のみ傷ついていたりするので、精度の低い検査ではどこが傷ついているのか特定できないなんてこともあります。

 

脊髄を損傷することによって考えられる症状

 

脊髄を損傷した場合、最も多い症状は麻痺です。手、足にしびれが残って精密な動作ができないというものから、全く体を動かすことができない、というものまで状態はいろいろあります。

 

麻痺が出てしまうと自分では動くことができないので、介護が必要となってしまうケースが多いです。床ずれ対策、食事をするために電動ベッドの購入、車椅子の用意、車椅子を積むことができる車の買い替え、と状態によってはかなりの出費も予想されます。

 

また、大きな麻痺が残ってしまった場合、交通事故に遭った本人の精神的なケアもとても大切です。ついこの前まで五体満足で生活をしていたのに、一つの事故で体が動かなくなってしまうと、かなりのストレスがかかります。

 

自暴自棄になってしまったり、鬱になってしまったり、けがの治療は進んでも心が病んだままになっては意味がないので、主治医と良く相談しておきましょう。

 

保険会社のいいなりになってはいけない

 

脊髄損傷のような後遺障害は、被害の大きさの割に、椅子に座ってじっとしているとぱっと見では症状がわからないという弊害を持っています。

基本的には相手か自分の保険会社と示談の交渉を行うわけですが、保険会社の担当者は決してあなたの味方とはいえないので、保険会社側のいいなりになってしまうのは避けましょう。

 

事故の衝撃やけがで精神的に疲弊していると、もうどうでもよいという気持ちになって粘り強く示談するのが嫌になってしまう可能性もあるのです。

脊髄損傷は、いくらお金を積まれても元に戻ることのない重大な被害です。今後の生活のためにも、事故をきちんと終わったことにするためにも、区切りという意味でしっかりとした補償を要求することが大事です。

 

示談も裁判も、お金や時間、知識がかかる争いです。弁護士に交渉を委任して示談交渉をすれば面倒な事態をより良い方向で解決することも可能です。

保険会社のいいなりになってしまう気がする、不安がある、納得できないことがあるという方は、専門家にバトンタッチするのがおすすめなのです。

 

後遺障害認定のためにもきちんとした病院へ

 

脊髄損傷は、特に非骨傷性脊髄損傷の場合、精密検査をしてもどこがどのように傷ついているのかわかりづらいという問題があります。

 

損害賠償請求でも重要な後遺障害の等級を申請するために、脊髄損傷の恐れがある場合はできるだけ早く最新の設備を使っている病院で検査を受けましょう。

また、定期的に病院に通い、どの程度の障害が残っているのか検査を受けて記録を取っておくことも非常に重要です。

 

客観的かつ公正な記録があれば後遺障害の等級を申請するさいに役立ちますし、示談交渉でも「交通事故が原因で後遺障害を得た」という主張を補強する心強い判断材料になってくれます。

 

念入りに検査を受けるに越したことはありませんから、最新式の設備を持っている病院には多少遠くても行ったほうが良いです。けがの治療も示談交渉も、出来る限りの手間をかけて準備をしましょう。