死亡事故における逸失利益

By | 2015年7月27日

死亡事故における逸失利益とは

 

交通事故被害によって被害者が亡くなってしまった場合、通常の損害賠償請求金額よりもかなり高額の慰謝料なり損害賠償なりを請求します。

いくらお金を積んでも故人が戻ってくるわけではありませんが、それでもお金でしか謝意を表すことができないわけですし、交通事故の相手がなんの対価も払わないのでは遺族感情も納得できないからです。

 

死亡事故と人身事故、被害者が亡くなるかどうかによって大きく金額が変わってくる損害賠償の費目は、死亡慰謝料と、死亡逸失利益の2種類となっています。

今回は、「死亡事故における逸失利益」の請求に関して、いくつか知っておいていただきたいことをお伝えしていきます。

 

・逸失利益とは

 

機を逸すし失ってしまう利益、と書く逸失利益は文字の意味通り、「その人が亡くなってしまったことで、手に入れる機会を失ってしまった利益」のことを指します。

 

人一人が亡くなることによって失う利益というとピンと来ないかもしれません。わかりやすいところでいうと、今月、来月の給料はどうでしょうか。

 

会社勤めをしている、自営業である、どんなケースであっても、亡くなってしまった以上職場に出勤して仕事をし、来月分の給料を稼ぐことはできません。いつもと同じように給料日を迎えても、給与が振り込まれることはないのです。

 

仮に一家の大黒柱である、という方が亡くなっている場合、それも奥さんは専業主婦で、幼い一人息子を育てているなら、大黒柱と来月からの給料を失ったことによる生活の不安定さは相当なものになります。

 

将来に渡って亡くなった人が稼ぎだすはずだった利益は、事故の原因たる相手側に請求できるわけです。

 

逸失利益の計算はとても奥深い

 

交通事故後の損害賠償請求では、もちろん死亡事故の逸失利益に関してもきちんと計算できるように計算式が作られています。

 

・故人の基礎収入×(1-生活費控除率)×死亡時の年齢から求めたライプニッツ係数

 

これが、死亡事故における逸失利益の基本計算式です。

それでは早速、計算を行うために必要な各項目の補足をしていきましょう。

 

各職業の基礎収入一覧

 

死亡事故における逸失利益で最も重要な、故人の基礎年収の決まり方を抑えていきます。

 

・給与所得者の基礎年収

 

給与所得者とは、入社するときに契約書を取り交わして働いているサラリーマン、雇われ店長、アルバイト、フリーターは大体給与所得者に当てはまります。

 

月給制で働いて収入を得ている人、というものでもわかりやすいかもしれません。とにかく、給与所得を得ている人はすべてここに当てはまります。

 

給与所得者の基礎年収は、原則として事故に遭う以前の収入額から計算します。

休業損害の計算などでは事故前3ヶ月間の収入の平均を取るなどの方法を利用しますが、給与所得者の場合前年分の源泉徴収票があれば確実に収入額を求められるので、難しいことはありません。

 

ただ、若年者や同業他社に比べて著しく収入額が低い人の場合、全国の収入平均をまとめた「賃金センサス」というデータを引用して、死亡時年齢の平均年収のほうを採用します。

 

若い人であれば今後10年で飛躍的に年収が高くなっていく可能性が高いので、その帳尻合わせを行うわけです。

 

・事業所得者の基礎年収

 

自営業を行っている人、弁護士などのいわゆる自由業と呼ばれる職業の人が対象です。

事業所得者は給与所得者と違ってどこにも雇われていません。店を経営していたり、フリーランスで活動したり、毎回の仕事の出来高によって収入を得ているのが特徴です。

 

事業所得者の基礎年収は、基本的に前年の確定申告書をみて決めます。確定申告をしていない場合は、実際の収入額を証明できる振込の記録などを利用して平均収入を求めます。

 

なお、事業所得者でも若年者で収入が少ない場合、賃金センサスのほうが収入額が高ければそちらが採用されることもあります。

 

・会社の役員の基礎年収

 

会社の役員は、通常の社員と同じように働いた成果に対してもらう報酬と、会社の業績や節税のために発生する役員報酬を受け取っています。例えば、基礎の月給が25万円で、役員報酬が20万円なら実質毎月45万円もらっていることになるわけです。

 

この役員報酬20万円の部分は、実際当人ががんばって増えているという性質の報酬ではないので、基礎収入に加算するのが難しいです。

 

保険会社側が提示してくる死亡逸失利益の計算では、まず間違いなく役員報酬を抜いた基礎収入額で計算をしてくるので示談がまとまりづらく、結局裁判まで行かないときちんとした支払いをしてもらえないケースが多いです。

 

・主婦(主夫)の基礎年収

 

いわゆる家事労働者、主婦といった人たちは誰かと契約をして働き、給料を貰っているわけではありません。しかし家事労働も生活のために必要な労務の提供の一環なので、賃金センサスから平均年収を探し出し、その金額を適用するようになっています。

 

パートをしているなど、兼業主婦をしている場合、賃金センサスと実収入のどちらか高いほうを採用します。

 

・無職(学生・子供)の基礎年収

 

学生や子供など、まだ正式には働いておらず無職の人が亡くなった場合、賃金センサスから年収の平均を持ってきて計算を行います。

 

確実にというわけではないのですが、大学在学中、または大学に行っていない者に対しても大卒程度の平均年収を適用する場合があります。

 

・無職(失業者・高齢者)の基礎年収

 

無職のなかでも、失業者や高齢者はちょっと基礎収入の求め方が違います。

基本的には、「無職であっても今後職に就く可能性があったか」が重要です。

 

求職中だった、過去に働いていた経歴があって再就職の可能性は高かった、という場合、以前働いていたときの年収か、賃金センサスの平均額を比較してどちらか高いほうを採用することになります。

 

生活費控除率

 

働いてお金を稼ぐと、その収入のなかから生活費を支払うことになります。使ってしまう生活費分まで請求すると、本来使えなかった金額まで得してしまうことになるので、生活費分は逸失利益から差し引いて考える必要がある、とされています。

 

生活費控除は、一家の大黒柱として1人を扶養している場合は40%、2人扶養している場合は30%、独身男性なら50%、女性なら主婦や独身などを問わず30%と定められています。

 

ライプニッツ係数

 

逸失利益の計算では、人は皆67歳まで働くと考えて、「あと何年間働いて収入を得られたのか」を計算します。

20年後の100万円を今もらうと、銀行に預けておけば利子がついて100何万円になってしまいますよね。将来と現在の時差によって起きる金額の調整を行うために必要なのが、ライプニッツ係数という数値です。

 

ライプニッツ係数に関しては、故人が亡くなったときの年齢から数値を簡単に探せる表を国土交通省が発表しているので、年齢さえわかれば簡単に求めることができます。