労働能力の損失による逸失利益

By | 2015年7月27日

交通事故における専門用語

 

慰謝料、損害賠償、示談、後遺障害などなど、交通事故後あなたが触れていくことになる賠償金の請求のためにさまざまな専門用語を理解しておく必要があります。

 

日本語はそもそも非常にファジーな言語です。

読む人によって理解の仕方が違ったり、同じことを表現するためにたくさんのいい方があったりします。法律系の用語というのは、多くの人が読んだとき間違ったり誤解することのないようにお固くなっているのです。

 

今回説明するのは、損害賠償の金額を増やすために知っておいてほしい用語、「逸失利益」です。

逸失利益の説明をするために労働能力の損失という考え方にも触れていきますが、とくに交通事故のけががもとになって後遺症が残っている、体が不自由である、という人に知っておいてほしい言葉なのです。

 

逸失利益とは、「交通事故にさえ遭わなければ本来あなたが手にしていたはずの利益」のことを指します。

 

例えば、営業マンとして日々営業車を乗り回し、取引先との商談にいそしんでいるあなたが交通事故に遭って、右足の切断という非常に大きなけがと後遺障害を得たとします。

 

けがは治ってもこれまでのように営業車を運転することはできません。移動が多い営業マンという職業で、車に乗れない、長距離の移動が難しいというのは大きなハンディキャップになってしまうことでしょう。

 

これまでのように働くことができなければ、職場をクビになったり収入が減ったりすることになります。これは、本来あなたが得ていた利益が減っている、という意味になるのです。

 

本来手に入れられるはずだった、逸失してしまった利益を、交通事故の原因である相手側に請求する。これが逸失利益に対する賠償なのです。

 

労働能力の損失から逸失利益を考える

 

逸失利益を導き出すためには、実際に減っている利益から考える差額説というものと、労働能力がどのくらい低下したのかによって賠償額の計算をする労働能力喪失説というものを使います。

ここでは、労働能力の損失を中心に考えてみましょう。

 

まず、逸失利益の賠償金額を出すために使う計算式を紹介します。

 

・基礎収入×労働能力の喪失率×ライプニッツ係数

 

です。これまた難しい言葉が出てきましたね。

 

基礎収入というのは、これまでにあなたが手にしていた収入のことです。大体においてあなたの年収だと考えておいて構いません。

 

労働能力の損失率とは、交通事故に遭う前のあなたの労働力、スキル、利益を出すために使える力を100%だとしたとき、交通事故によってどのくらいその能力が下がっているのか、を示すためのパーセンテージです。

 

100メートルを11秒で走ることのできる人が足首を捻挫した場合、全力で走っても100メートル走り切るのに25秒かかるようになってしまう。こうした15秒分の能力の低下を表すための数値です。

 

ライプニッツ係数に関しては、ちょっと難しいので解説を加えます。

 

ライプニッツ係数

 

逸失利益の賠償請求では、「今後○年間で得るはずだった利益」を「今」請求することになります。

ここで問題になるのが、現在の貨幣価値と未来の貨幣価値が異なるということです。

相場がどうだのという話は置いておいて、単純に、将来の利益を今まるまる先取りしてしまうと、儲けすぎてしまうのです。

 

銀行に預金していると、利息がつきますよね。

仮に10年分の逸失利益を今請求して受け取り、全額銀行に預けておくと、10年後には本来受け取るはずだった金額よりも利息が着いた分得をしてしまいます。

 

この辺りのことを調整すべきではないか、と使われているのがライプニッツ係数です。

 

本来なら、事故によって働けない、困っている年数分の基礎年収とライプニッツ係数をかけて計算をしなければなりません。

ただ、それだと余りにも計算が面倒です。10年分の逸失利益を計算するだけでも10回の計算と、それぞれの金額の合計を出さなければなりません。事故に遭ったあなたが若い人であれば、この計算の回数が20回30回40回にもなってしまうわけです。

 

そこで、67歳を働ける年齢の最後と定めて、「67歳になるまであと何年あるか」を考えれば適切なライプニッツ係数がわかる、という便利な表が用意されています。

 

この表があるおかげで、

 

基礎年収×(就労可能年数から割り出した)ライプニッツ係数=賠償額

 

というとても簡単な計算で損害賠償金額を算出することが可能なのです。

 

逸失利益を増やすために必要な考え

 

逸失利益に対する損害賠償金額を計算するにあたって、ライプニッツ係数は動かしようがありません。

 

裁判基準や自賠責基準などがあり、なかなか平均的な金額を出しづらいその他の賠償金と違って、逸失利益に関する金額計算は変動しづらいです。

 

では、どういうところに気をつければ損害賠償金額を増やせるのでしょうか。

答えは、後遺障害認定等級にあります。

 

事故の結果どの程度の後遺症が残ったのかによって、後遺障害認定等級の第1級から第14級のどれか(後遺障害と認められないときは等級外)が与えられることになります。

労働能力の損失率は、実はこの後遺障害認定等級で何級になったかによってパーセンテージが変わるのです。

 

参考までにいっておくと、後遺障害の等級が第1級の場合、労働能力喪失率は100%です。物理的に働くのが不可能になっているような後遺症に与えられる等級なので、100%の補償を行うべきと考えられます。

 

逆に、一番低い第14級の労働能力喪失率は、5%です。

軽いむちうちなどでも認定されうる低い等級なので、実害として労働能力が下がっているとはいいづらく、考えられる逸失利益のほんの5%分しか請求できません。

 

もしあなたの後遺障害認定等級が本来第10級と認定されてもおかしくない状況で、14級と認定されていたら。

 

たった数%の違いではありますが、大きな金額の差異が出ることになります。

適切な金額、損害賠償請求を行うためには、その前段階にある後遺障害認定等級をきちんとしてもらわなければならないのです。

 

不安なときは弁護士に相談を

 

逸失利益には、死亡時に行われる損害賠償金の計算もあります。

けがや後遺症も大きな損害ですが、本人の死亡となるとますますしっかりとした補償を行う必要性が出てきます。

 

一家の大黒柱かそうでないかによって金額が変わったり、一生続く後遺症ではなく、一定期間のみで完治する可能性の高いむち打ちに関しては期間を区切って金額の計算をしたり、個々の交通事故の内容によってどのように金額計算をすべきか異なるのです。

 

計算に必要な情報さえあれば比較的簡単に金額を計算できる逸失利益ですが、必要な情報を集めるのは大変です。

 

特に後遺障害認定等級に関しては弁護士と相談したうえで交渉することで級数がより高いものにアップすることもあるので、総合的に見て賠償額に不満があるときはぜひ私たち弁護士を頼ってください。