入通院関係の費目

By | 2015年7月27日

入通院による精神的苦痛は慰謝料請求できる

 

あなたが交通事故によって治療を必要とするけがを負った場合、当然そのけがの原因は事故相手にあるわけですから損害賠償請求をすることができます。

 

このときの治療費は、よほど高額なものや医師から見ても妥当性が感じられないもの、または行っても症状の改善が見られないものでない限り、かかった実費を請求できるようになっています。

 

ただ、けがをする、入院、通院を行うというのは決して楽しい行為ではありませんよね。治療をすれば完治するけがだとしても、けがを負ってから治るまでの間傷が痛むのは決して無視することのできない損害です。

 

そこで、損害賠償請求の費目のなかには「慰謝料」というものが用意されています。精神的苦痛ないし肉体的苦痛への求償ができるのです。そして、入通院に伴う精神的苦痛への慰謝料を、入通院慰謝料、傷害慰謝料などと呼ぶのです。

 

被害者感情としては、損害賠償よりも慰謝料でしっかり補償をしてもらいたいですよね。しかし金額を求めることで示談がうまくいかなかったり、慰謝料の算定額が低いまま納得させられて、十分な補償を受けられないというケースが見られます。

 

もちろん実際の損害賠償の総額は細かな計算の結果導き出されるものですが、今回は入通院関係の費目として、入通院慰謝料の計算方法や基準を紹介します。

 

自賠責の基準における入通院慰謝料の計算

 

慰謝料、損害賠償の請求を行う際、結果に対して最も大きな違いを生むのは自賠責基準を採用するか、裁判基準を採用するかです。

 

自賠責保険の基準は最低額として設定されているもので、任意保険会社から最初に提示される慰謝料や損害賠償もこちらの基準に近いものを出されることが多いので、基本として知っておきましょう。

 

自賠責基準では、入通院慰謝料として一日通院したり入院した日数ごとに4200円で計算されます。収入多寡やけがの程度によってこの金額は変わることはなく、治療にかかった日数で金額が決まります。

 

計算に使う治療の日数は、「最初に病院に行って診察を受けた日から症状固定の診断を受けるまでの期間」か、「実際に病院に入院ないし通院した日数の2倍」の少ないほうが採用されます。

 

例えば、治療を開始してから2ヶ月の60日で症状固定になり、入院はしておらず通院のみ週に2度で16回とします。この場合、自賠責基準における入通院慰謝料は、

 

60>16×2=32

4200円×32=134400円

 

になるわけです。

 

裁判基準における入通院慰謝料の計算

 

自賠責による基準は、あくまでも慰謝料の最低保証額でしかありません。実際に裁判になったときや弁護士に頼んだ場合を考えると、裁判基準が採用される可能性が高いです。

 

裁判基準といっても、弁護士会によって微妙に振れ幅はあります。良く使われるのは、東京地方裁判所(東京地裁)の判例から求めた基準額である赤本基準と、日本全国の判例から計算した青本基準があります。

 

どちらも、自賠責基準に比べると非常に高額な損害倍請求が可能になる基準です。今回は通称赤本、東京地方裁判所の判例に基づいた基準を使って入通院慰謝料を計算してみます。

 

ただ、計算する前に確認しておかなければならないことがあります。裁判基準では入院と通院の比率によって治療日数の結果が変わるのです。

 

一般的に考えると、通院よりも入院のほうが大変ですしお金もかかります。けがの程度が重いことも多いです。なので入院と通院は精神的な苦痛の度合いも違い、入院が多い場合はよりしっかりと補償を請求できるようになっています。

 

例をあげてみるとわかりやすいです。自賠責基準では、入院1ヶ月も通院1ヶ月も同じく30×4200円で、入通院慰謝料は126000円です。

 

一方の裁判基準では、入院1ヶ月の場合慰謝料は53万円。通院1ヶ月の場合慰謝料は28万円となっています。通院だけだった場合でも2倍以上の金額になりました。

 

では、自賠責のときと同じように計算をしてみましょう。治療を始めてから症状固定まで60日、実入通院日数は16回の場合、裁判基準における入通院慰謝料は、

 

通院が2ヶ月に渡っているので最高52万円、ということになります。

注意しておきたいのは、裁判基準から請求額を求めた場合、他の事情によってこの金額が上下することもある、ということです。

 

最もわかりやすいのは、事故後むち打ちになってしまったパターンです。

 

むち打ちの場合は別計算なので要注意

 

むち打ちは、追突などをされるとなりやすいけがです。レントゲンで撮っても明確にどこが悪いから痛むというものは分からず、本人の自覚症状によるところが大きいので、証明の難しい後遺症でもあります。

 

むち打ちはただのけがではなく、後遺症なのです。後遺障害が残った場合、その度合に応じて後遺障害認定等級が出され、等級ごとに慰謝料などを請求できますが、むち打ちの場合比較的短期間で完治します。

 

一生ものの後遺症というわけではなく、病院に通い詰めて症状が改善されるわけでもないので、裁判基準でも通常のけがより入通院慰謝料の計算基準が低めに抑えられています。

 

比較してみましょう。通常、裁判基準では入院30日だった場合53万円、通院30日だった場合28万円というのはさきほど紹介しましたよね。

 

むち打ちの場合、入院30日で35万円、通院30日で19万円、という金額で計算が行われます。もちろん、むち打ちはけがや後遺症の一種であって、他に大きなけがなどを負っている場合は高い方の基準が採用されるので心配はいりません。

 

裁判基準はその他の事情も勘案される

 

裁判基準による入通院慰謝料の金額は大きいです。ただ、一つの基準が絶対とされているわけではなく、特別な事情がある場合はその都度調整が行われます。

 

例えば、入通院の期間が長期間にばらついている場合。事故後時間が経過してから初めて病院に行ったとすると、治療期間そのものが長くなったりしてしまいます。

 

こういったときは治療期間の全体で慰謝料を考えるのではなく、実際の入院、通院した日数に3.5をかけた日数で計算します。

 

また、小さい子供がいるので無理をして退院を早めた、仕事をするために入院が必要なところを通院での治療に切り替えたなど、入院期間が短縮されるに値する事情がある場合は金額が加算されます。

 

交通事故によって負ったけがが特にひどい、何度も手術しなければならない場合は通常のけがに比べて精神的肉体的な苦痛はより高いはずですよね。こういった事情に対しては別途慰謝料の金額が増額されたりもします。

 

他に、交通事故のけがで入院、通院しなければならなくなったことによって著しい不利益を得た場合も同様です。交渉次第ではありますが、離婚した、留年した、昇進の話や就職内定が流れた、という場合も勘案されるので、詳しい交渉額は弁護士などに相談されることをおすすめします。